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週刊新潮 九月三十日号
「石原良純の楽屋の窓 」
120回
父に成り代わりまして

十月一日は……都民の日。
 都内渋谷区にある慶應幼稚舎は、十月一日が休み。ところが、中学校は、横浜・日吉だから、十月一日は平常通りに授業となる。神奈川県に県民の日はないし、結局、中学生の僕の休みは一日減ってしまった。
 大人は、都民の日が休日になりはしない。僕が都民の日の恩恵を受けたのは、小学校の六年間だけ。それでも、神奈川県の子供より得したということか。
 で、今年の十月一日は、国勢調査の日。先日、国勢調査キャンペーンに参加した僕は、今年が国勢調査の年であることを初めて知った。
 夏の名残りのムシ暑い空気の中、天井の低い新宿駅西口地下広場の特設ステージを、大勢の聴衆が取り囲む。イベントはお堅いお役所主催とは思えぬほど熱気を帯びていた。
 東京都主催となれば、その長は東京都知事ということだ。知事殿に敬意を払いビシッとスーツを着込んだ僕は、ワイシャツにびっしょりと汗を滲ませながら、お集りの皆様と共に国勢調査の意義を学んだ。
 国勢調査とは、英語の人口センサス=Population Censusを訳したもの。人口センサスの歴史は古く、紀元前三千六百年のバビロニアまで遡る。ハーン。
 国勢調査は“国のいきおい”を調べる調査ととられがちだが、明治二十九年の『国勢調査ニ関スル決議』に、国勢とは“国の情勢”と明記されている。ヒーン。
 大正九年から五年ごとに行われ、今回が十八回目の国勢調査で得られた統計は、街づくり、社会福祉、経済政策、防災政策、議員定数など、様々な分野に幅広く利用される。フーン。
 ハヒフヘ、ホーンとために成る、成る、一時間。すっかり国勢調査通になってしまった僕は、五年前、調査員が独り暮らしの我が家にも、やって来たことを思い出した。
 それにしても前回の調査からこの五年で、石原良純家は劇的に変化を遂げたものだ。
 四十男の結婚は、“上昇する未婚率”を低下させ、一昨年の長男誕生に続く今年の長女誕生は、一世帯当たりの平均世帯人員二・六七人を上廻り、“世帯の小規模化”に逆行した。
 一方、結婚後も仕事を続ける妻は、“働く女性の割合上昇”“専業主婦の減少”という労働人口の推移と一致している。俳優業の僕に医師の妻は、“サービス関係職業就業者の増加”という国勢調査の統計どおりということだ。
 統計に現われる以上に、僕の仕事のフィールドはこの五年で大きく広がったのも事実だ。
 二〇〇一年二月に『石原家の人びと』を刊行し、皆様より御好評を博したおかげで、その後、エッセイなどの執筆依頼がぐんと増えた。怠け者の学生時代の何倍も、机に向かう時間が長くなる。
 同年四月からは、『FNNスーパーニュース』でウェザーキャスターを務めるようになった。SMAPの稲垣吾郎さんや神無月さんが僕の天気予報のものまねをしてくれるくらい、視聴者認知してもらえたようだ。「天気予報は当たらない」とか……、なんだかんだと言われても、今後も、分かり易く正確な天気予報と、“空の楽しさ”を伝えていきたい。
 選挙特番の手伝いをするようにもなった。午前中は首相官邸でインタビュー。午後は調布の撮影所でヤクザ映画で血まみれになる。そんな広角打法の仕事のチョイスを楽しんでいる。
 では五年後、次回の国勢調査の頃、僕はどうなっているのだろうか……。そんなことより、個人情報の保護問題、オートロック式マンションの増加など、国勢調査員には逆風が吹いています。
 皆様、ぜひ御協力を! 都知事に成り代わりまして。

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