新潮
TOP
NOW
PROFILE
WORK
MEMORY
JOURNEY
SHINCHO
WEATER
CONTACT

 

 

 

 

 



週刊新潮 十一月二日号
「石原良純の楽屋の窓 」
125回
行楽の秋・いざ仙台へ

カエデの紅葉前線は、北海道・浦河を、十月十九日に平年より十一日早く出発した。
 最低気温が八度を下回ると紅葉は始まる。葉を落とす準備に葉と枝の間に離層と呼ばれる仕切りができ、葉っぱの中に糖分が多くせき止められるほど、紅葉は鮮やかに。美しい紅葉は、日中の充分な日の光りと、夜間の冷え込みが不可欠だ。
 今年の秋の天候はなんとも不順だ。残暑の厳しさに秋雨の季節が遅れ、長引く秋雨に秋晴れの季節が遅くなった。カラッと天高く晴れ渡り、グッと夜気が冷え込む秋の爽やかな日々をほとんど楽しんでいない。紅葉前線の南下スピードは鈍り、他の紅葉の見ごろは二週間程度遅れると気象庁は予想している。
 だが、紅葉前線が九州に行き着くまでの今の季節こそが、絶好の行楽シーズン。日本人ならば、景色と温泉とうまい物を求めて旅に出なければ。
 というわけで、『中井正広のブラックバラエティ』は、番組あげて仙台の奥座敷、秋保温泉に旅立つこととなった。
 もちろんこの番組は、旅番組ではない。弁当箱の片隅にある醤油入れ“たれびん”を紹介したことに始まり、日常生活で何気なく目にする“モノ”をテーマとした情報バラエティーだ。
 今までスポットライトの当たったことのない新分野を取り上げる制作姿勢は、放送文化を質的に向上させた、と優秀番組を顕彰するギャラクシー賞の月間賞を受賞したこともある。
 番組のタイトルからして、パーソナリティーのSMAP・中居正広さんの“居”を“井”と表記するスタッフが手掛けるユニークな番組。回を重ねるごとに番組の内容は始めのお約束関係なしにあらぬ方向へ向う。
 中居さんが少年時代、地元の“片瀬ゴマ”で遊んでいたと語れば、今はなき幻の片瀬ゴマを番組は探して廻る。
 その上、僕が酒・米・魚がうまい富山が好きだと言えば、僕の知らぬ間に富山の馴染みの寿司屋まで押しかける。僕が欲しかった立山黒部アルペンルートのでっかい雷鳥のぬいぐるみを買い込んで勝手に番組のマスコットにしてしまう。
 番組が紹介した石のオブジェはバカ売れ。その石をメインキャラクターにしたイベントは、“愛・地球博”をもじって、“あ・石九博”と呼ばれ、日本テレビの夏休みイベントの目玉となってしまった。
 名誉というか迷惑というか、なると大使、飾りかまぼこ大使、笹かま大使、ちくわ大使、はんぺん大使と僕は次々に任命された。確かに、なるとが好きだとは言ったが、番組は次々と練り物を取り上げては僕を親善大使に祭り上げるのだ。それにしても、さきいか大使はおかしくないか、さきいかは練り物ではないだろうが。
 そんな番組スタッフの自慢は台本がペラリとA4紙一枚ということ。どの番組よりも単純明快な台本だと威張られても困ってしまう。
 今回、旅行に出かけることになったのも、中居さんと中島知子さんと僕の三人のほんのフリートークが発端だった。三人で旅しても、きっと話が合わないという二人に、僕が、旅の醍醐味を味わわせてあげると言ったものだから、ロケ嫌いの中居さんまで巻き込んで旅行に出ることが決定した。旅先が仙台に決まったのも、もちろんなんとなく。
 ツアーコーディネーター役の僕からの提言は、秋の空をのんびり見上げて大いに夢を語り合うことだ。集合場所はグループ旅行の定番、東京駅・銀の鈴と言いたいが、日頃旅慣れていない芸能人の皆様にそこは一歩譲って、日本テレビ局舎とした。
 元モー娘。・矢口真理さんも加わった四人旅。さて、どうなるか。日曜日の夜をお楽しみに。


<<前号 次号>>

<<前号 | 次号>>
 
ページのトップへ