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週刊新潮 十一月三十日号
「石原良純の楽屋の窓 」
129回
数字の大河

02 03 16 22 23と聞いて、次の数字に28を挙げる人はかなりの通。この六つの数字は、十一月十七日抽せん第二百六十五回ロト6の当せん番号だ。
 ロト6は、01から43までの中から六個の数字を自由に選び出す。もし、六つの数字が全て抽せん数字と一致したら、一等賞金二億円をゲットできる。
 今回は、前週に一等当せん者がなく、キャリーオーバーの賞金を含め四億円が狙えるビッグチャンスとなった。普段、宝くじなど興味を示さない人の間でも、ちょっと話題となった。
 数字選択式宝くじの楽しさは、なんといっても自分で数字を選べることだ。
 普通の宝くじは、売り場に並んでくじを買うだけ。自分にできることといえば、高額当せんが良く出ると言われる売り場に足を運ぶか、窓口でおばさんに、くじの山の一番下をくれと注文をつけるくらいのこと。
 ところが、ロトは違う。数字はあくまで自分が選ぶ。もし一等当せんともなれば、それは自分の力、努力の賜物に他ならない。なんとなく売り場へ出かけ、なんとなく買ったくじが偶然当たって手にする賞金とはわけが違う。
 もちろん、高額当せん金額も魅力だ。パチンコは勝って十万円。競馬は勝って百万円。それがミニロトならば一千万円。ロト6ともなれば一発で一億円ゲットできるのだ。
 まずは、過去の当せん数字のデータを自分なりの表にしてみる。六個の数字が二百数十回分並ぶ姿は、まるで数字の大河。時には川辺に佇んで景色を楽しむようにぼんやりと、時には流れの中に漂流物を探すように目を凝らして、河の流れをひたすら眺める。
 やがて、流れの中で浮き沈みを繰り返す無数の数字の中に、元気な数字、顔色の悪い数字、仲の良い数字、仲の悪い数字、いろいろなものが見えてくる。
 次の瞬間、真夏の夕凪の海でボラが跳ねるように、当たりを予感させる数字がピョンと跳ねる。その数字をサッと網で掬い取るのが良純流ロト攻略法だ。
 小さな子供の僕は、駅前のバス車庫に連れていってもらうのが大好きだった。ひっきりなしに入庫、出庫を繰り返すバスに書かれた車体番号を眺めるのが楽しかった。数字好きの僕にとってロトは、趣味と実益を兼ねたもってこいの娯楽なのだ。
 先日、僕と同じく数字を愛し、ロトを楽しむ人を発見した。
 僕がホスト役を務める『素顔がイイねっ!』(日本テレビ・土曜朝)では、毎回、ゲストの憩いの場所に足を運ぶ。今週第三十六回のゲストは、錦野旦さん。待ち合わせ場所は、京橋にある宝くじチャンスセンター。いわゆる宝くじの総本山だった。
 錦野さんが宝くじにはまったそもそもは、奥様の影響だとか。そして、なんとなんと、その奥様は先月見事にミニロトで一等九百四十万円をゲットしたそうだ。
「本当に」と疑い眼の僕に、錦野さんは当たりくじのカラーコピーを財布から取り出した。錦野さんはそのコピーを眺めては、必ず奥さんよりも高額当せんしてやる、と日夜、数字を考えているのだとか。
 錦野さんは、もう三年も必勝法を宝くじ専門誌に連載している。そんな錦野さんの数字選びは至ってシンプルだ。自分や家族の誕生日や、ニシキノだから24とかのゴロ合わせ。
 あえて先輩に助言させて頂けば、煩悩を払い数字の流れに身を沈めない限り、高額当せんは望めませんぞ。
 どちらが先に億万長者になるかはともかく、先輩をお招きしておいて、ホストの僕の衣裳がすっかりかぶってしまったのは、改めてお詫びをします。
 錦野旦ふうを気取って衣裳を用意したスタイリストが悪いのです。

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