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週刊新潮 三月二十三日号
「石原良純の楽屋の窓 」
143回
良純の三十四万件

 喪服のような黒いスーツ、固く結んだポニーテールを更にキツく纏めた髪。ギラリと眼光鋭い目。人気ドラマ『女王の教室』(日本テレビ系)の主人公・阿久津真矢と僕が対決したのは、十七日、十八日放送のスペシャル版でのこと。
 教え子を差別することも、体罰を与えることも辞さない鬼教師・真矢の活躍を描き話題となったドラマ。そのスペシャル版は『スターウォーズ』ばりに、なぜ悪魔教師が誕生したのか、真矢の過去を暴くエピソード1、2の二夜連続放送だ。
 でも、初共演となる、天海さんに僕が抱くイメージは、漆黒の真矢とは正反対のものだ。いつか観た舞台の天海さんも、裕次郎叔父の十七回忌法要のステージ上の天海さんも、会場全体を目映く照らすように輝いていた。
 実際にお話する天海さんは、キッパリとハキハキとした物言い。大きな声と笑顔で楽しく会話が弾んだ。
 聞けば、天海さんのお母さんは大の裕次郎ファン。お兄さんが生まれた時、お母さんは裕次郎と名付けたかったが家族に反対された。天海さんが生まれると、“裕”ではないが同じ音の一字を使って本名・祐里と名付けたのだそうだ。
 なるほど、そんなことも御縁で、十七回忌の新高輪プリンスのステージに、天海祐希さんが登場したのだと、僕は今更ながらに納得した。
 ○○商店街の裕次郎、△△町内会の裕次郎、裕次郎の名を耳にするのは、夜の巷の素人のど自慢ばかり。周りで本名・裕次郎さんにはとんとお目にかからない。
 でも、慎太郎さんの名前は時々聞く。先日、ロケでご一緒した間寛平さんの長男が慎太郎さんなのだそうだ。寛平さんのお母さんが慎太郎ファンで、「僕には何のことわりもなく、長男の名前を決められてしまった」と笑っておられた。
 とんねるずの石橋貴明さんのお兄さんも、たしか長男が慎太郎さん。親父の色紙を用意すると、タカさんに、とても感謝された覚えがある。
 しかし、慎太郎と典子夫婦の子供の四兄弟が、なぜ、伸晃、良純、宏高、延啓なのか。別に親戚にゆかりのある名前ではない。どれもお坊さんみたいに小難しい名前ばかりだ。
 特に、良純は音が四人の中でも孤立している。Yから始まる名前は外国人には発音できないし、日本人にもまどろっこしい。これまで同じ名前の人に出会ったことがない。
 インターネットのヤフーで“石原良純”を検索してみると、二十四万件のヒットがあった。続いて“良純”で調べると三十四万件。つまり、その差十万件に僕の知らない良純'Sが隠れているわけだ。
 良純親王は後陽成天皇の第八皇子であり、徳川家康の猶子。後に、得度して初代知恩院門跡となる。でも、惜しむらくは、この方は“よしずみ”ではなく“りょうじゅん”さんだった。
 よしずみさんの良純さんは、田原良純博士。フグ毒・テトロドトキシンを解明することに成功した日本最初の薬学博士だそうだ。
 二人の他にも、オペラ演出家、サッカー選手、大学教授と数こそ少ないものの、様々な分野で良純氏が活躍されていることを知った。
 ちなみにヤフー検索のヒット数で、伸晃が十九万件、宏高が十二万件、延啓が二百四十件。やっぱり世間では、良純が一番頑張っているということか。
 さて、明日からの『女王の教室』は観てびっくり。現実も、ドラマ同様に過酷な教育現場なのだろうか。ウチの良将クンや舞子ちゃんの行く末を案じてしまう。
 都知事や議員の先生方、もっとしっかりしてくれよ。
 いやいや、一番大切なのは、親が子供に毅然とした態度で接すること。僕は、このドラマで、すっごく真面目に学習した。

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