週刊新潮 四月五日号
「石原良純の楽屋の窓
」
194回
似ている?
「ハイ、石原?野口ペア消えた」
爆笑問題の田中裕二さんに机を大きくパンと叩かれたのは『なるほど!ザ?ワールド 世界地図の祭典SP』(フジテレビ系四月一日夜放送)でのこと。
”ひょうきん由美さん”こと益田由美アナウンサーを筆頭に、有名人レポーターが世界を駆け巡り、世界のおもしろ情報をクイズにした人気番組の復刻版だ。
その昔、イギリスの片田舎にロケで出かけた時、たまたま『なるほど!』で観たロケ地の隣町のおもしろ知識を現地の人にひけらかすと、皆さんに大いに驚かれた。近くに暮していても、知らないことは沢山ある。イギリス人が知らないイギリス街角情報を遠い国から訪れた僕だけが知っていた。
クラシックカーの公道レース”ミッレ?ミリア”が、広くその名を知られていなかった頃、取材に出かけたイタリアの地方都市でのこと。テレビカメラと日本人スタッフを見た現地人に「な〜るほどの、ロ〜ケ、で、す、か」といきなり片言の日本語で尋ねられたこともある。
誰もが海外に飛び出せたわけではない時代。インターネットもなく、情報誌も充実していなかった時代。外国の景色や情報に飢えていた僕らは、まず『兼高かおる?世界の旅』でその国の基礎知識を学び、次に『なるほど!』で知識の幅を広げた。当時の日本人は『なるほど!』のおかげで、世界中の誰よりも世界の片隅の情報に精通していた。
昨年はこの番組で、僕は出題レポーターとしてカナダ東海岸へ出かけた。
ノヴァスコシア半島にいだかれたファンディ湾は、世界有数のえび漁場。しかし、漁師さんは、ある”世界一”のためにいろいろと漁に制約を受けている。「その”世界一”とは何か」というのが問題だった。
答えは、干満の差。大潮には、その差は二十メートルにも及ぶ。海岸線は水平線の彼方まで後退し、広大な干潟が出現する。漁港の桟橋はすっくと泥の中にそそり立ち、漁船はゴロリと港内に横たわる。
でも、僕が驚いたのは、そんな不思議な景色より、カナダの漁師さんが天気予報を、いまだにラジオで聞いていたこと。
日本の漁師さんは、天気予報をまず寝床の中で携帯電話でチェック。その後は家を出るまでテレビをつけっ放しにして、最新情報を入手すると聞く。カナダの予報伝達は、日本よりずっと遅れているようだ。
日本の漁師さんは、日本の天気予報はよく当たると言い、カナダの漁師さんは、カナダの天気予報は全然当たらないと嘆いていた。日本の予報技術が、世界に誇れることが最果てのカナダの漁師街で実証された。
今回は、アルピニストの野口健さんとのチームで解答者席に並んだ。世界発の最新おもしろ映像クイズとともに、往年の懐かしVTRで、みのもんたさんや松坂慶子さん、泉ピン子さんの今よりも、もっとお若いレポート姿を楽しんだ。
そしてもう一つ、豪華優勝賞品も大きな魅力だ。賞品は、”世界のどこへでも行ける航空券”。優勝すれば世界中どこへでも、自分の行きたい場所へのエアチケットをゲットできる。
さて、どこへ行ったものか。昨年開業した中国?青海省西寧からチベットのラサへと続く青蔵鉄道は、標高五千メートルを越える高原鉄道。高気密の高速列車で希薄な空気の乾いた大地を疾走してみようか。
それとも、今年開業したばかりの台湾新幹線で、フランス人運転士の腕前を試してみるか。
いやいや、どうせ行くなら、より遠くへ。ブラジルのリオのカーニバルも魅力的だ。
ところで、なんで僕は野口さんとペアなの。似てるから。そんなに、似てないでしょ。
|