週刊新潮 四月十九日号
「石原良純の楽屋の窓
」
196回
長嶋家の常識 石原家の常識
「良純さんも僕も、ひねくれ者だから」
そういって僕の肩を抱くのは、長嶋一茂さん。
違うんだって。誤解なんだって。僕は決してひねくれ者ではない。
そんな二人で仲良く司会するのが、『一茂&良純”リサーチ 我が家は変じゃない! 一億人お茶の間の真実』(テレビ東京系”十三日夜放送)。
我が家でゴクゴク普通、どこの家でも当然行われていると思っている事が、意外や世間の常識から大きくはずれていたりする。この番組では、”我が家の流儀”の普遍性を検証する。
そんな番組の司会が、なんでよりによって一茂さんと僕なのか。プロデューサー氏が、長嶋家と石原家が大きく世間の常識から逸脱していると思っているからに違いない。
たしかに石原慎太郎家の流儀は一風変わっていた。夕食が二部制で、親父の年に一度の家族サービスは遊園地ではなくヨットで、「地震が来る」と聞けば兄弟全員に学校を休ませた。そんな話を一冊に纏めたのが新潮社刊『石原家の人びと』。「おもしろおかしく俺を語るな」と親父は怒っていたが、そこはそれ、石原家は作家の家。ベラベラとテレビで喋るのはアウトでも、活字にするのはギリギリセーフ。石原家では”ペンは電波よりも強し”。
しかし変なのは、親父の家の話。石原良純家では、夕食は家族四人揃って食べ、遊園地にも出かけ、風聞にも惑わされない。
一風変わっているといえば、僕より一茂さんに違いない。なにしろお父上は、数々の伝説に彩られた長嶋茂雄氏なのだから。
収録中に、一茂さんから抱腹絶倒の発言がポンポンと飛びだした。
僕と同様に家で父親に怒られた記憶がほとんどないという一茂さん。唯一、怒鳴られた思い出は、「バントのサインを見逃してベンチへ戻った時」。
巨人軍選手時代の話をされても、それは親子の会話ではなくて監督と選手の会話でしょうが。
占いの話になると一茂さん、「占いは信じないがノストラダムスの大予言は信じた」と言う。一茂さんの人生に大きな影響を与えたようだ。
”一九九九年七の月、火を噴く魔王が大空より舞い降りる”
予言の真偽を確かめるまでは家族が持てないと思い、一茂さんが結婚したのはその翌月なのだ。
夜空を見上げる一茂さんは予言を恐れ、打撃不振の時には宇宙人に誘拐されてアンドロイドに改造され、ガンガンとホームランを打てないものかとUFOを心待ちにしていたという。
そんな一茂さんに、僕も共感するのは子供の話。
三年前、ドラマで共演中に一茂さんに双子の赤ちゃんが誕生した。一茂さんは、毎日、赤ちゃんの顔を見るのが楽しくてしょうがない様子。ちょっと父親歴が先輩の僕が「子供の面倒をみるのは疲れるでしょう」と尋ねると、「双子でなくて三つ子でも四つ子でもよかった」と満面の笑みをたたえていた。
ところが、ドラマ終了二ヵ月後に再会した一茂さんは「片一方が寝たと思えば、片一方が起きる。双子は大変。三つ子などとんでもない」とやつれ切っていた。
そして今回の収録で、その後の一茂家の様子を尋ねると、「やっと双子を可愛がる余裕ができた」と子育ても一段落した様子。
こと子育てに関しては、”さすがの一茂”も普通の父親。その姿に僕はどこかで安心した。
だが、番組で食事、入浴、トイレなど何気ない日常生活をスタジオゲストと一万人アンケートに照らし合わせれば、誰もが他家との思わぬ違いに驚く。
決して、変わっているのは長嶋家と石原家だけではないのです。
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