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週刊新潮 四月二十六日号
「石原良純の楽屋の窓 」
197回
マイ名古屋ブーム

「名古屋は、ワイドビュー”しなの”走ってるの」
 長男・良将は、相変わらず電車の話題になると目を輝かせる。
「名古屋の水族館には、ペンギンさんいるの」
 長女・舞子は、僕が話した名古屋港水族館のプールを泳ぎ廻るペンギンに興味津々。我が家は今、ちょっとした名古屋ブームだ。
 僕の名古屋の常宿、マリオットアソシアは、名古屋駅に隣接する高層ホテル。客室の窓からは、遥か眼下に名古屋駅をひっきりなしに発着する列車が、まるで鉄道模型のジオラマのように一望できる。
 手前から、東海道線、中央線、特急列車発着ホーム、関西線。その奥に新幹線ホームまで、線路がずらりと並ぶのだ。
 オレンジとグリーンのラインが入るニ一一系は、中央線、東海道線の近郊電車。最新型の三一三系は、オレンジ色の一本ラインで主に快速列車に使われている。関西線から紀勢線へ乗り入れる列車は、色は同じでも非電化区間を走るディーゼル列車。快速”みえ”は、二両の短い編成で鳥羽へ向う。
 高山線で飛騨高山へ向うワイドビュー”ひだ”と、紀勢線で紀伊勝浦へ向うワイドビュー”南紀”は、流線型のお洒落なディーゼル特急。パンタグラフの代わりに先頭車両には小さな排気筒が黒くすすけて見える。
 東京方面に少し飛び出たホームは、名古屋駅臨海高速鉄道のあおなみ線。その名の通り青い海をイメージしたブルーストライプの電車は、名古屋港へと向う。
 新幹線のホームは、絶えず列車が出入りを繰り返す。七◯◯系”のぞみ”のかものはしのようなノーズが、上から眺めると一段と長く見える。鉛筆のように尖った銀色の車体は、五◯◯系”のぞみ”。碧とブルーの二色のストライプが伸びる細身の列車が、僕にはさよりに見える。
 さらにJR線の向こうには、大きく右に弧を描きながら名古屋の地下駅から顔を出す近鉄電車の姿も見える。運がよければ黄色い”伊勢志摩ライナー”や、白い”アーバンライナー”にも出会えるかも。
 マリオットから見下ろす名古屋駅の大パノラマを、良将なら一日中、飽きずに眺めているに違いない。
 以前、取材で出かけたペンギンプールに驚いたのは名古屋港水族館。氷の上に列をなす何十羽ものペンギンが、次々にプールに飛びこむと、アッという間に反対側まで泳ぎ切る。流線型の泳ぐ姿はまるで魚のようだ。すると次の瞬間、パッと水中から氷の上に飛び上がり、再び列に並ぶ。愛嬌のあるペンギンの姿とオリンピック並みの泳ぎに時を忘れて見入ってしまった。
「舞ちゃんとペンギンは、同じ位の背の高さだね」そんな僕の言葉に、舞子はペンギンと会うのを楽しみにしている。
 大プールには、イルカの泳ぎをじっくりと観察できる高さ四メートル幅ニ十九メートルの超ワイドな水中観察窓がある。シャチのクーちゃんも皆の人気者だ。
 水族館の廻りには、大観覧車のある遊園地もあれば、先代の南極観測船”ふじ”も係留展示されている。水族館周辺は、一日ではとうてい遊びきれない名古屋の一大レジャースポットだ。
 この四月から名古屋の東海テレビで新番組『発見!わくわくMY TOWN』(四月二十一日夕方六時半スタート)で、コーディネーターを務めることになったのも、マイ名古屋ブームに火を付けた。
 情報番組好きの名古屋にあって、その街の新しい魅力を引き出すCMプロデューサーが僕。敏腕アシスタントの夏川純さんと共に毎週、中京圏を旅して廻る。
 収録のついでに、良将と舞ちゃんを名古屋に連れて行こうか。いやいや、仕事に子連れはないだろう。
 悩みを抱えた僕は、今週も新幹線で名古屋へ向う。

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