週刊新潮 一月三・十日新年特大号
「石原良純の楽屋の窓
」
231回
僕の頑張らなかった大賞
♪心の底まで しびれるような♪
日本テレビ・Gスタジオに設けられた豪華セットで、”銀恋”をインリンとデュエットしたのは『中井正広の大ブラックバラエティ』(一月五日夜放送)でのこと。
もちろん、僕が望んでマイクを握ったわけではない。僕が番組でPR大使を務めている、かまぼこ業界や駒込商店街の皆さんからの応援ビデオレターをでっち上げられ、中居正広さんら出演者の皆に無理矢理ステージに押し上げられたのだ。
数千万円かけた、とスタッフが胸を張るセットで、スポットライトを浴びる僕の足元には二酸化炭素の夜霧が這う。そのくせ、僕が手にするのはブランデーグラスならぬ大きな金魚鉢なのだから、やっぱり、この番組のスタッフはいかれている。僕が少し気分を出してインリンを見詰めようものなら、胸元を覗き込んだと周りの皆が囃し立てる。やっぱり、この番組のキャストもいかれている。
この番組の特色は、番組企画を考えるのはスタッフではなく、出演者ということ。番組収録中に僕らが何気なく漏らした一言が、そのまま次の企画になる。
新年のスペシャル用に僕らが提案したのは、ミニSLを使って鬼ごっこ、トランプ遊び、中居さんお得意の野球選手形態模写クイズ。そして、豪華セットをぶち建てての”紅白歌合戦ごっこ”だ。小学生の昼休みの遊びをそのまま、二時間半番組にしてしまった。
大人が子供のように無邪気に遊びに興じる姿は、時に観る人の目には新鮮に映るらしい。おかげで番組は四年目を迎え、新年スペシャル番組が作られるまでに出世した。
お気軽遊びとはいえ、ゲームに勝てば一流店がスタジオに出店し、握りたての寿司、揚げたての天ぷら、串揚げが食べ放題。負ければ指をくわえて眺めることになる。
そういえばこの秋、思う存分に松茸を頬張ったのは、『ブラックバラエティ』でババ抜きに勝利した時だけだった。番組の豪華食事は侮れない。
でも、この忙しい年の瀬に、大の大人が鬼ごっこやトランプをやっている場合なのだろうか。やり残したことが沢山あるのに。
昨年の夏、スピーチのフランス語原案を作ってくれた友人へは、お礼を果たせぬまま、二度目のお正月を迎える。
三年前にウイルスを拾ったノートブックパソコンは、机の下に潜ったまま未だ修理に持っていってない。
部屋に山積みしている出演番組のビデオテープのDVD化も全く進んでいない。先日、年末で有効期限が切れるマイルで、DVDレコーダーを獲得したから、新年からは作業に着手しよう。苦労して飛行機に乗って貯めたマイルを無駄にしないのが、真のマイラーの姿だ。
ボウリングだって、あれだけ小野日出朱プロに懇切丁寧に御教授して頂いたのに、結局、番組本番での二百アップはならなかった。
ならばと二千万円ゲットに挑んだ『スーパー$ミリオネア』。
”作者が実母の話をもとに書いたのは『赤ずきんちゃん』か『マッチ売りの少女』かどっち”
母親が狼に食べられるのも、凍死するのもおかしな話。正解は、マッチ売りと聞いても……、そんなの関係ねぇ。
公園のジョギングコース千周は、今年も達成出来なかった。新年一月からのNHK木曜時代劇『鞍馬天狗』で底冷えの京都の夜に風邪をひき、十二月は一度も走っていない。おかげで頬がプックリしてきた浪人姿の僕は、桂小五郎というよりも西郷隆盛に見えるかも。
そして何より、年の瀬にぐだぐだな『銀座の恋の物語』を歌ってしまったなんて。裕次郎叔父さん、本当にスミマセン。
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