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週刊新潮 五月二十九日
「石原良純の楽屋の窓 」
250回
バームクーヘン、食べる?

 ようやく去った花粉症の季節。でも今年は、僕の鼻センサーが、ゴールデンウィーク明けまで異物を感知し続けていた。どうやら僕は、今年からスギに加えヒノキの”キャリアー”にもなってしまったようだ。
 そしてもう一つ、僕の花粉症の季節の心残りは、痩せられなかったこと。
 花粉症を承知で大酒を飲んで眠れば、鼻から水っ洟がタラリと垂れて目が覚める。慌てて鼻を?んでも、?んでも?んでも水っ洟は止まらない。丸めたティッシュで枕元のゴミ箱がいっぱいになる頃には、アルコールに焼けた喉の渇きが痛みとなる。涙と鼻水で顔も枕もグチャグチャ、とても眠ってはいられない。
 だから、三月と四月は、僕にとって禁酒の季節。
「酒を飲まないと、食べ物に興味がなくなる。すると結果、痩せる」というのが僕の方程式。僕は密かに”花粉症禁酒ダイエット”と名付けている。
 ところが今年は、酒を飲まない夜を続けても、体重が落ちやしない。そこで僕は気がついた。普段は口にしない楽屋のせんべい、おやつのアイスクリーム、食後のケーキに手を出していたことに。
 このところ、よくバームクーヘンにお目にかかる。
 日頃、バームクーヘン好きを吹聴して廻ったおかげで、お土産や楽屋用にスタッフがバームクーヘンを買っておいてくれる。結婚式の引き出物のような大きなバームクーヘンも、六枚組の小さなバームクーヘンも、全部、僕のバームクーヘン。深夜、風呂上がりの番茶とバームクーヘンが至福の時だ。酒を飲まないのだから、これ位の楽しみがあってもいいだろう。もちろん、バームクーヘンは誰にも分けてやらない。
 そんなダイエット失敗を嘆く人々に朗報がある。黒柳徹子さんを社長とする我が『ドリーム・プレス社』(TBS系・金曜夜)では、ダイエット新企画に乗り出した。
 その名も”レコーディング・ダイエット”。
 食べ物の種類も、量も、食べる時間も何も我慢する必要はない。ただ、自分が食べた物と時間をノートに記録してゆくだけで痩せるという驚異のダイエット法。
 提唱者は、オタク界のカリスマ的存在、岡田斗司夫氏。ダイエット前の氏は、身長一七一センチで体重は一一七キロ。そこから一年間で、五〇キロ痩せた。
 ダイエットの始まりは偶然。氏は食べ歩きの趣味が高じて、どうせならば食べ歩きエッセイを出そうとメモを取り始めた。するとある時、ふとメモを眺めて無意識に食べているものの多さに愕然としたという。
 そこで、”自分はなぜ太っているのだろうか”と、持ち前の好奇心が湧き起こる。食生活をひたすら記録すると、不思議なことに、ダイエットなど意識していないのに、月二キロのペースで体重が減少した。
 凝り性な氏は、減ってゆく自分の体重の不思議にのめり込む。次の段階は、食べたもののカロリーを調べて記録してゆく。この時点でも、食事制限などいっさい必要ない。
 最終段階では、カロリー摂取量を基礎代謝量ぎりぎりに抑える。ここまで記録を続けていると、何が高カロリーで、何が低カロリーか、何を食べて何をパスするかカロリーの数字合わせが楽しくなってくるという。
 氏は、”有酸素運動の無い、誰にでもできる文系ダイエット”と言う。
 食事制限は誰もが苦手。けれど、一日に食べたものをメモする位なら、僕にもできそうだ。
 ちなみに、レコーディング・ダイエットを実践する番組スタッフは効果絶大、たしかに痩せてきた。
 深夜、バームクーヘンを手に取る僕。食べるならばメモを取らねばならないし、バームクーヘンは食べたいし……どうしよう。

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