週刊新潮 一月一・八日新年特大号
「石原良純の楽屋の窓
」
280回
ゲリラ豪雨に、ウクレレ
”今年のお天気を、漢字一文字で表わすならば”
視聴者から募集した葉書のなかで一番多かったのは、”雷”……。そう伝えていたのは、お天気博士・森田正光さんの天気予報。これはおもしろい。ウチのお天気コーナーでも、やってみるか。
師匠のアイデアを、ただ単にパクるわけではない。テレビの前の皆さんに、空模様に興味を持ってもらう。天気予報を観てもらう。そして、防災意識を高めてもらう。これ全て、お天気キャスター共通の願いなのだ。
他局で気象情報を伝えるキャスターは、ライバルでも仲良しだ。つい先日も、『緊急開催!お天気キャスターサミット!!ニッポンの空が危ない!』という番組に集い、大いに語り合った。
番組収録寸前まで各局に出演していた天気予報で「今日はどんなネタを話したのか」「どうやってネタを探すのか」「誰がネタを決めるのか」「何時頃に局に入るのか」「リハーサルの雰囲気は」等々、お互い普段から気になっていた他局のお家事情に興味津々、話が盛り上がる。
また、気象予報士を志し、ウェザーキャスターになったのも、人それぞれに理由がある。
日本気象協会に入り、お天気畑一筋を歩む森田さんは、”就職型”か。最近は、在学中に資格を取得し、技術を活かせる職場を目指すこのタイプが増えている。
”アナウンサー型”は、地方局でお天気コーナーを担当したのがきっかけで、予報士を目指す。
異業種からの”転職型”も多い。『とくダネ!』の天達武史さんは、僕の故郷、逗子でファミレスに務めていたという。夏の日、店の売り上げは天気によって大きく左右される。小雨に煙る週末、客足が遠のいてガランとした店内で、「どうしたら、雨が降る日が分かるのか」。そんな思いから気象予報士になったという。
元からテレビの世界にいて、資格取得とともに活動域を広げた”横滑り型”。僕は、ここに分類されるのだろう。
もちろん、真面目な、この科学討論番組は、二〇〇八年のお天気十大ニュースを振り返る。
年初は、低気圧の発達が弱く、冬型の気圧配置があまり強まらない暖かい冬だった。
春の訪れも早かった。東京では、全国のトップを切って三月二十二日に”桜の開花”が発表になった。
三月二十六日から、”竜巻注意情報”の提供が開始された。竜巻やダウンバーストなど激しい突風をもたらすような発達した積乱雲の存在を知らせる速報は、雷注意報を補足する。
広い範囲でまとまった雨の降る日が少ない少雨の梅雨は早く明け、猛暑の夏がやって来た。しかし、時に北から上空に強い寒気、時に南から非常に湿った風が流れ込み、日本各地で局地的な豪雨に見舞われた。
新聞やニュースで頻繁に”ゲリラ豪雨”という言葉を耳にするようになる。ヒートアイランド現象の都市熱が地上付近と上空の温度差を増長させ、積乱雲の発達を促したのも間違いない。
雷の鳴る夏の日、黒い雲が現われると、ウチの長男・良将は窓のない洗面所に逃げ込んだ。自然は人間にとって恐ろしいもの、都会に暮らす人間はそんなあたりまえのことを忘れている。隠れる良将の行動は至って正しい。
東京の年間の雷日数は二十四日を数え、八十八年前の最多記録を塗り替えた。でも、なんで長女の舞子は恐がらないのだろう。
十一月は、真冬並みの寒波に見舞われたが、十二月は暖かい。正月のスキー行が心配になる。
うわっ、二〇〇八年も終わりか。僕の重大ニュースは、ウクレレをはじめたことかな。
二〇〇九年は、ウクレレで紅白でも目指してやるか。
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